日本の国際的役割示した平和のための岸田ビジョン
岸田首相は先ごろ、シンガポールで開かれたアジア安全保障会議で講演し、日本、アジア、世界の危機に積極的に対応するための5本の柱からなる「平和のための岸田ビジョン」を示し、外交・安全保障面での日本の役割を強化する考えを表明した。防衛力の強化、インド太平洋諸国への支援などさまざまな取り組みが、日本の安全、国民の生命・財産を守ることにつながる。
「我々が努力と対話と合意によって築き上げてきたルールに基づく国際秩序が守られ、平和と繁栄の歩みを継続できるか。あるいは、『ルール』は無視され、破られ、力による一方的な現状変更が堂々とまかり通る、強い国が弱い国を軍事的・経済的に威圧する、そんな弱肉強食の世界に戻ってしまうのか。それが、我々が選択を迫られている現実だ」。岸田首相は安保会議で、岐路に立っている国際社会の現状をこう指摘した。
その上で「平和のための岸田ビジョン」を推進することを表明、「日本の外交・安全保障面での役割を強化していく」と強調した。
岸田ビジョンは①ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化②安全保障の強化③「核兵器のない世界」に向けた現実的な取組の推進④国連安保理改革を始めとした国連の機能強化⑤経済安全保障など新しい分野での国際的な連携の強化-の5つの柱で構成する。
この中で「ルールに基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化」では、特に「自由で開かれたインド太平洋」の新たな展開を推進することが課題となる。
現在、ASEANが基本方針「インド太平洋に関するASEANアウトルック」を示しているほか、米国、豪州、インド、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、EUなどがインド太平洋へのビジョンを打ち出しており、そうした国々とビジョンを共有し、国際秩序の維持を進める考えだ。
また「安全保障の強化」に関して岸田首相は「私自身、『ウクライナは明日の東アジアかもしれない』という強い危機感を抱いている」と強調。その上で「ルールを守らず、他国の平和と安全を武力や威嚇によって踏みにじる者が現れる事態には備えなければならない。そうした事態を防ぎ、自らを守る手段として、抑止力と対処力を強化することが必要。これは、日本自身が、新たな時代を生き抜く術を身につけ、日本が平和の旗手として発言し続ける上では不可欠だ」と述べている。
岸田ビジョンは、歴史の岐路に直面する平和を実現するために、世界第3位の経済大国の日本が果たすべき役割を示したもので、それを実現していくことこそ日本ができる平和への貢献だ。
ところで、同会議では中国の魏鳳和(ウェイフォンフォー)国務委員兼国防相が台湾情勢について「中国から台湾をだまし取ろうとすれば、あらゆる犠牲を払ってでも戦う」と演説し、武力行使も辞さない考えを示している。
アジアの緊張はこうした覇権主義的な動きがもたらすものだが、国際社会が一致して対応しなければならない。そういう意味では、岸田ビジョンはまさに国際社会が求めるものといえる。
(terracePRESS編集部)