岸田首相の参加など時代を画したNATO首脳会議
NATO(北大西洋条約機構)首脳会議が先ごろ開かれた。今回の首脳会議はフィンランドとスウェーデンの加盟が認められたこと、そして岸田首相が参加したという2つの点で時代を画する会議となった。平和をどのように守っていくかがこれからの西側諸国の課題となる。
歴史的転換点と言えば、実はこの2つ以外に重要なことがある。それは12年ぶりに更新した行動指針「戦略概念」で、ロシアを「最大かつ直接的な脅威」と位置づけたことだ。
ウクライナを侵略した不法行為をみれば、ロシアが欧州の最大の脅威になったことは間違いない。NATOのストルテンベルグ事務総長も「我々はこの数十年間で最も深刻な安全保障環境に直面しているが、各国が結束してこの困難に立ち向かう」と述べている。
このロシアの脅威が顕在化したからこそ、中立化政策をとっていたフィンランドとスウェーデンの両国は、NATOに加盟することによって自国の安全保障を確保しようと判断したのだ。
また、NATOは「戦略概念」の改定で、中国について「その野心と強制的な政策は、我々の利益、安全、価値への挑戦だ」などと中国の脅威についても初めて言及した。
欧州の安全保障の枠組みであるNATOがアジアの中国についての脅威を懸念する時代になったのだ。
このように世界の安全保障環境が激変しているのだから、アジアの経済大国である日本が関心を持たなければならないのは当然だ。
その状況変化の象徴が岸田首相のNATO首脳会議への参加であり、日本の首相の出席は史上初めてのこととなった。アジア・太平洋地域からは日本のほか、オーストラリア、ニュージーランド、韓国も出席している。
岸田首相は首脳会議で「国際社会が歴史の岐路に立つ中、NATO首脳会合に、我が国を含むアジア太平洋のパートナーが参加していることは、欧州とインド太平洋の安全保障が切り離せないとの認識の表れ。ロシアによるウクライナ侵略は、欧州だけの問題ではなく、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だ」などと指摘。
その上で「ロシアによるウクライナ侵略は、ポスト冷戦期の終わりを明確に告げた。東シナ海・南シナ海で力を背景とした一方的な現状変更の試みが継続されている。ウクライナは明日の東アジアかもしれないという強い危機感を抱いている。力による一方的な現状変更の試みは、決して成功しないことを、国際社会は結束して示していかねばならない」と述べ、中国の拡張主義に対応する必要性を強調した。
参院選では憲法改正や防衛費の増額も争点の1つになっているが、国際社会が着実に変化していることは事実だ。その事実から目をそらして、憲法での自衛隊の位置付けや防衛費の増額を批判するのは、空想的な平和主義に過ぎない。
欧州諸国が欧州の平和維持のために努力している中で、日本もアジアの安定のために行動することが必要だ。
(terracePRESS編集部)