最低賃金31円増は政権の方針実現に向けた一歩
厚労相の諮問機関である「中央最低賃金審議会」がこのほど、2022年度の最低賃金(時給)について、全国加重平均で31円を目安に引き上げるよう後藤厚労相に答申した。この目安通り改定されると、最低賃金の全国平均は前年度比3.3%増の961円となる。岸田政権の「新しい資本主義」は成長と分配の両立を目指しており、新しい社会の構築が着実に進んでいる。
今回の引き上げ目安は、ウクライナ情勢などによる物価上昇を受けたもので、最低賃金を時給で示すようになった2002年度以降で最大の上げ幅となった。
経団連の大手企業の2022年春闘妥結結果(最終集計)によると、定期昇給とベースアップを合わせた月例賃金の上昇率は2.27%、引き上げ額は7562円となっており、4年ぶりに前年実績を上回っている。
経団連の十倉会長も「物価が上昇しており、そういうときに持続的な賃上げを進めるのが課題だ」と述べており、最低賃金も物価対策がきちんと盛り込まれたことになる。
目安通りに上がった場合、東京都が1072円と最も高く、高知県と沖縄県の850円が最も低くなる見通し。大阪府は1023円となり、東京都、神奈川県に次いで1000円の大台に乗せることになる。
岸田首相はこれまで国会で、最低賃金についてきるだけ早期に全国加重平均1000円以上を目指す考えを表明しているが、今回の引き上げ目安で、全国加重平均は現在の930円から961円となり、その土台ができたことになる。
松野官房長官も記者会見で、引き上げ目安について「(岸田文雄政権が掲げる)『新しい資本主義』の時代にふさわしい引き上げ額の目安で、その結果を尊重したい」と述べ、歓迎する考えを表明している。
しかし、相変わらず一部メディアや野党からは不十分との批判が出ているが、これは経済を知らないがための批判だ。
最低賃金の引き上げは中小企業の人件費に影響する。このため、一気に引き上げれば経営を圧迫することになる。経済環境をにらみながら、中小企業支援をしながら引き上げていかないと、雇用の場を失わせることにもなりかねない。
「不十分だ」「1000円には到達していない」などと批判することは容易にできるが、ここで失敗すれば日本経済の足腰を弱体化させてしまう。だからこそ、今回は最大の上げ幅を実現しながらも、あと一歩のところでとどめたことになる。
松野官房長官は「中小企業においてもしっかりと賃上げが行われるよう、引き続き政府一丸となって事業再構築や生産性向上に取り組む中小企業へのきめ細やかな支援などに取り組んでいく」と述べており、今後は中小企業が着実に賃上げすることが重要になる。
全国加重平均1000円まであと39円を打ちだした今回の目安は、わずか31円とはいえ、大きな意味をもった31円となった。
(terracePRESS編集部)