最悪回避が不透明な徴用工問題
旧朝鮮半島出身労働者、いわゆる徴用工をめぐる訴訟で、賠償を命じられた日本企業の韓国内資産の売却の可否について韓国最高裁の判断が月内にも出るとみられている。しかし、ボールがあるはずの韓国側の動きははかばかしいとは言えず、日韓関係の改善は不透明なままだ。
韓国の尹大統領は17日の会見で元徴用工問題について「日本が憂慮する主権問題の衝突なく、債権者に補償が行われる方法を深く考えているところです」と述べている。韓国政府は、尹大統領の発言のように政府主導で裁判の原告団に補償するという方向を検討しているとされるが、これについても前進はまったくみられていない。
そもそも、この問題は日韓請求権協定によって解決済みで、日本側が民間企業も含めて補償する義務は負っていない。もし元徴用工への補償が必要であれば、大統領発言のように韓国政府が検討している方向で実施するのが筋だ。
日本としては、林外相が「(日韓関係は)旧朝鮮半島出身労働者問題、更には慰安婦問題等によって非常に厳しい状況にあるが、このまま放置することはできないと考えている。国と国との約束を守ることは、国家間の基本的な関係の基本だ。日韓関係を健全な関係に戻すべく、日本の一貫した立場に基づき、韓国側と緊密に意思疎通をしていく」と述べており、あくまでも韓国側の自主的な解決を求める考えだ。
こうした状況の中で気がかりなのは、韓国政府が原告団の説得や世論を対策としてどのような方策をとるかということだ。
実は、尹大統領は17日の記者会見で「両国が未来志向的な協力を強化すれば譲歩と理解を通じ円満に早く解決できると信じている」と述べている。ここで注目すべきは「譲歩」という言葉を使ったことだ。
これが日本の「譲歩」を求めることを意味するのだとしたら、今後の様相はまったく変わってくる。日本が譲歩すべき理由は1つもないのだ。
しかし、原告団の中には被告の日本企業による謝罪を求める声があるのも事実だ。
もし韓国政府が、日本企業などの謝罪を〝取引材料〟にし、韓国政府が原告に対して補償の容認を求めるような事態になれば、日韓関係は改善するどころか、さらに悪化する恐れもある。
日本の立場とすれば、徴用工問題はあくまでも日韓請求権協定で解決済みで、新たな謝罪などをするべき問題ではない。
慰安婦問題にしても、いったん両国で合意したことが反故にされているのだ。韓国政府の主導で、韓国国内で解決することが最低ラインになる。
それを実現するためには、日本企業に何らかの実害、つまり資産が現金化された場合、日本として対抗措置を取るというメッセージを出すべきだ。
(terracePRESS編集部)