災害対応中の国会審議のあり方
台風19号は各地に大きな爪痕を残した。被災者はもちろん、地元の自治体も政府も、懸命に行方不明者の救助活動や復旧活動をしている。そうした中で参議院では15日から予算委員会が開催された。もともと、予定されていた予算委だが、参院自民党は「国会で災害について議論することが大事だ」として、与野党折衝を経て当初7時間を予定していた審議時間を8時間に延長した。
台風被害の拡大が続いている中で、現在の政府の優先順位は、人命救助や復旧活動だろう。もちろん国会審議は重要だが、閣僚らを8時間という長時間拘束する今回の参院自民党の手法には疑問符も付きそうだ。
長年の歴史の中で自民党はこれまで災害対策に力を入れてきた。中でも地形が急峻で水害が起こりやすい日本では、ダムや河川の堤防など治水が重要で、無駄な公共事業などと野党や一部のメディアから批判を受けても、その整備を進めてきた。
東日本大震災以降は、災害の被害を最小限にとどめ、迅速に回復させることを目的とした国土強靱化に取り組み、現在は3か年の集中対策を実施中だ。特に防災のための重要インフラなどの機能維持に向けては3年間で3.5兆円程度を投資する予定だ。
それでも今回の台風では多くの犠牲者や被災者を出したことは極めて残念だが、だからこそ今回の災害で、政府にいま求められているのは、一刻も早い救助活動と復旧活動の促進だ。それこそ被災地では「自助」「共助」「公助」でそれぞれが懸命な作業をしているのだ。万全な公助を果たすためには、閣僚はもちろん、各省庁の幹部も陣頭指揮をとらなければならないはずだ。
そう考えれば、予算委員会に首相や閣僚を8時間も縛り付けるのは、疑問が残る。
災害が発生して間もないいまの段階では、救助活動や復旧活動を円滑に進めるため、国会も協力するという視点が必要なのではないか。
台風に関する質疑とはいえ審議時間の1時間追加を行った参院自民党は、国民の安全や安心の確保に向けた国会審議の在り方を考える必要があったのではないか。それが被災者に寄り添うということなのだろう。
(terracePRESS編集部)