野党にはできない「政治」

米国とイランの緊張状態は、イランによるイラク国内の駐留米軍基地に対する弾道ミサイル攻撃を受けた米国が「軍事力を行使したくはない」(トランプ大統領)と表明し、大規模な衝突は回避される見込みが強くなった。

 

今回の緊張について日本のメディアはお決まりのように、米国によるイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官殺害で一気に高まったとしているが、そうではない。

そもそもは昨年12月27日にイラク軍基地がロケット弾攻撃を受け、米国民間人1人が死亡、米兵4人が負傷したのがきっかけだ。

米国はこれへの報復としてイラン支援のイラクの民兵組織の拠点などを空爆。この空爆受け今度は、イラクにある米国大使館が襲撃されている。

つまり、米国による司令官殺害で一気に緊張が高まったのではなく、それまでのプロセスがあったのだ。

日本のメディアはこうした状況をほとんど伝えないから、米国だけが一方的に〝悪者〟扱いされてしまうが、ことの本質はそんな単純なものではない。

 

単純と言えば、野党が中東への海上自衛隊の派遣中止を求めている。立憲民主党、国民民主党、共産党などの野党国対委員長が8日の会合で、中東への自衛隊派兵の閣議決定を撤回するよう政府に求めることで一致している。

立憲の安住国対委員長は会合後、「緊張が一層高まるもとで自衛隊を派遣すべきではない」「野党としての意思を政府・与党に伝えたい」と記者団に述べている。

 

まさに条件反射的な反応と言えるが、中東への海上自衛隊の派遣は極めて重要な取り組みであり、野党は、昨年6月13日にイラン沖のホルムズ海峡近くで、日本の海運会社「国華産業」が運航するタンカーなど2隻が攻撃を受けた事件すら忘れてしまったようだ。

 

ホルムズ海峡はペルシア湾沿岸諸国で産出する石油の重要な搬出路で、毎日計1700万バレルの石油が通過しており、日本に来るタンカーの全体の8割、年間3400隻がこの海峡を通っている。だからこそ、日本の船舶を守ることが重要なのだ。

 

これまで、安倍首相はイランとの外交関係も強化するためイランを訪問し、ハメネイ師らと会談したほか、先ごろロウハニ大統領が来日している。

 

一方で日米同盟は日本の外交安全保障の基軸だが、そのイランとの関係に配慮し、米国提案の海洋安全保障イニシアチブ(有志連合構想)には参加はしないで、日本の独自の取り組みとして海上自衛隊を派遣するわけだ。

 

日本としては、日本経済の生命線ともいえる原油ルートの安全を確保するという姿勢を見せつつ、日米同盟やイランとの関係に配慮しているのだ。

これこそが野党にはできない「政治」と言えるだろう。

 

(terracePRESS編集部)