首相の〝思い〟伝えないメディア

安倍首相が28日記者会見をし、新型コロナウイルス感染症対策や今後の経済対策について語った。首相は具体的に、感染状況に対する危機的な認識などを表明し、改めて国民へのお願いも口にしたが、メディアからはほとんど、この首相の〝思い〟は伝えていない。

 

確かに、首相会見を受けて新聞各社は「長期戦覚悟」「学校再開見直しを言及」「緊急事態には慎重」「緊急事態の発令は『瀬戸際』」といった見出しで会見の中身を伝えていた。中には、「首相『爆発的な感染が発生しかねない』会見で強調」という見出しの記事もあったが、メインの記事ではなく、サイド記事的な扱いの記事だ。

 

しかし、首相は会見の冒頭から、新型コロナの感染拡大に対する危機感を表明した。それも具体的にだ。

首相は「幾つかの国々では、連日、数百人規模で死者数が増えており、増加する重症者に十分な医療を提供できていない、正に医療崩壊とも呼ぶべき事態も発生している。これは決して対岸の火事ではない。日本でも短期間のうちに同じ状況になっているかもしれない。それぐらいの危機感を持って、最大限の警戒を改めて国民の皆様にお願いする」と述べた。

欧米の国々の状況は、決して「対岸の火事ではない」と注意を促している。

 

その後も状況を丁寧に説明しているが、長くなるが引用しよう。

「ひとたび爆発的な感染拡大が発生すると、欧米の例から試算すると、わずか2週間で感染者数が今の30倍以上に跳ね上がる。そうなれば、感染のスピードを極力抑えながら、ピークを後ろ倒ししていくとの我々の戦略が一気に崩れることとなる」

 

「まだ欧米に比べれば、感染者の総数は少ないと考える方もいるかもしれない。しかし、私たちが毎日見ている感染者の数は、潜伏期間などを踏まえれば、2週間ほど前の新規感染の状況を捉えたものに過ぎない。つまり、今、既に爆発的な感染拡大が発生していたとしても、すぐには察知することができない。2週間たって数字となって表れたときには、患者の増加スピードは、もはや制御できないほどになってしまっている。これがこの感染症の最も恐ろしいところであり、私たちはこの恐ろしい敵と不屈の覚悟で闘い続け抜かなければならないのです」

 

「今、既に爆発的な感染拡大が発生していたとしても、すぐには察知することができません。2週間たって数字となって表れたときには、患者の増加スピードは、もはや制御できないほどになってしまっている。これがこの感染症の最も恐ろしいところであり、私たちはこの恐ろしい敵と不屈の覚悟で闘い続け抜かなければならない」

 

もちろん、危機感だけを強調すればいいということではない。しかし、感染拡大防止には国民の協力が不可欠で、協力を得るためには正確な状況を伝える必要がある。

首相は会見で、この危機的な状況を伝えたかったのだろう。

しかし、メディアは経済対策や緊急事態宣言の扱いなど、今ある危機にはあまり関心を示さないのだ。

 

メディアは、政府や自治体の対策批判には力を入れるものの、リアルな危険性を国民に分かりやすく説明するという責務を果たしていないが、せめて首相のこうした言葉ぐらい、国民に丁寧に伝えるべきだろう。

 

(terracePRESS編集部)