安倍外交の凄さ
安倍首相が先ごろ、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーンの中東3カ国の歴訪を終えた。中東地域を巡って、政府は日本関係船舶の安全航行に資する情報収集と関係国への情報提供・連携のために海上自衛隊の中東への派遣を決定し、1月11日には哨戒機2機が海賊対処行動の基地があるジブチに向けて出発、護衛艦「たかなみ」は2月2日に出港し、同月下旬から活動に参加する。
そもそも、今回の派遣は、米国が中東・ホルムズ海峡の民間船舶の安全確保を目指すための有志連合への参加を要請したことを受けてのものだ。しかし、有志連合に参加することは法的制約などもあり、そのままの参加は困難なことも事実だ。
その一方で、日本の原油の8割がペルシャ湾、ホルムズ海峡を通過することは事実で、日本が同地域を航行する船舶の安全に何も寄与しなくていいということは、日本が国際的責任を果たすという観点から、また日本の経済社会の安定を図るという観点からも容認されるべきではない。
そのため、日本は有志連合には参加せずに独自に派遣するという方式を選択したわけだ。
その上で、昨年6月に安倍首相のイラン訪問の答礼として12月にイランのロハーニ大統領が来日した際に、安倍首相が「我が国に関係する船舶の安全確保のための独自の取り組みを行っていくとの考え方のもと、情報収集態勢を強化するために自衛隊のアセットの活用に関する具体的な検討を進めている」などと説明。これに対してロハーニ大統領から「ペルシャ湾地域の緊張緩和に向けた日本の外交努力を評価し、自らのイニシアティブにより航行の安全確保に貢献する日本の意図を理解しており、さらに日本が透明性を持ってイランに本件を説明していることを評価する」などとの発言があった。
こうしてイランの理解を得ながら、安倍首相はさらに今回の歴訪でサウジアラビア、アラブ首長国連邦、オマーンに対しても日本の立場を説明しており、サウジアラビアでは首相の自衛隊派遣についての説明について、ムハンマド皇太子が「日本の取り組みを完全に支持する」と発言している。
つまり、日本は米国の要請については、国際平和に寄与するため独自派遣という形を取る一方で、中東の各国にも了解を取り付けているのだ。
これがまさに「外交」というものであり、ここが安倍首相の外交力の凄さと言えるのだろう。
立憲民主党など野党は、海上自衛隊の派遣中止を求めているが、国際政治は単純に白黒で物事を動かすものではないし、日本への原油を輸送するための努力すらしないのであれば、それは国民の安定的な生活の維持に責任すら果たさないということなのだ。それが野党の本質なのかもしれない。
(terracePRESS編集部)