テレワークの定着に一層の取り組みが必要
新型コロナウイルスの感染拡大が続いている中、西村経済再生担当相が、経団連など経済団体に対し、テレワークの推進を改めて要請。経済団体側も協力する考えを示したという。今回の要請は、新型コロナの感染拡大防止の機動的な対応策として〝緊急避難〟的な要請の色合いが濃いが、テレワークの推進はウィズコロナ、ポストコロナの社会を見据え、今後も恒常的に取り組む課題だ。
西村氏は経済団体とのテレビ会議で「感染を抑えるために、人と人との接触を減らさないといけない段階に来ている。ぜひテレワークを実践できる部分はしてもらえるとありがたい」と、現段階の感染対策として要請している。
これに対し、経済同友会の桜田代表幹事は「かけ声だけでは元に戻る。調査や実態把握をしつこくやる必要がある」と述べており、西村氏の緊急避難的な要請に対し、今後もテレワークの推進が必要との考えを示している。
そもそもテレワークは、政府が7月17日に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来」(骨太方針2020)で、「感染症拡大により、テレワークの活用を通じて、場所にとらわれず仕事ができるという認識が広まりつつある」などと盛り込まれており、テレワークの推進で新しい経済社会を構築する方針を示している。
そのための方策としても「全ての行政手続きを対象に見直しを行い、原則として書面・押印・対面を不要とし、デジタルで完結できるよう見直す。また、押印についての法的な考え方の整理などを通じて、民間の商慣行等についても、官民一体となって改革を推進する」と記述している。
しかし今回、西村氏が改めてテレワークの実施を求めざるを得なかったのは、経済界にあった一時の〝テレワーク熱〟がなくなり、通常の勤務形態に戻りつつあることを示しているのだろう。
また、新型コロナ感染症対策として「ワーク(仕事)」と「バケーション(休暇)」を組み合わせた造語である「ワーケーション」も注目を集めた。こちらはテレワークを活用し、リゾート地や温泉地などで余暇を楽しみながら仕事も行うもので、すでに地方自治体が「ワーケーション自治体協議会」を設立しており、現在、1道17県133市町村が参加しているが、実際、ワーケーションの定着にはまだ時間がかかる状況だ。
もちろん、政府はテレワークの推進を政策誘導する考えで、例えば、総務省はサテライトオフィスを整備する企業の法人税などを軽減する措置の創設を2021年度の税制改正要望で求める方針だ。
しかし、西村氏が再度の要請をせざるを得ないほど、かつてのテレワーク熱は冷めている。このため、政策誘導をするにしても、官民双方がテレワークを強力に進めないと、なかなか定着させることは難しいだろう。
今回の要請で経済界が再度、テレワークに向き合うことがあれば、緊急避難的なものではなく、恒常的な取り組みにする必要がある。
(terracePRESS編集部)