感染防止、デジタル、グリーン社会でメリハリついた政府予算
政府は2021年度政府予算案を決定した。一般会計の総額がおよそ106兆6100億円と過去最大となったが、新型コロナ対策予備費を除けば本年度当初予算から約1兆円減っている。その一方で、デジタル化やグリーン社会推進という中期目標をにらんだ予算を計上しており、メリハリの利いた予算となった。
政府は新型コロナ対策としてすでに20年度の第3次補正予算案を編成しており、これと21年度当初予算を合わせて「15カ月予算」としている。3次補正ではコロナ対策として4兆3581億円を計上しているが、当初予算でも各省予算の中にコロナ対策費が計上されており全体像を把握することは困難だが、15カ月予算として少なくとも10兆円を大きく超える規模で盛り込まれている。
21年度予算は菅首相が初めて取り組む本予算となるが、特徴としては、菅首相が提唱し、中期的な日本の成長の源泉となる「デジタル化」や「グリーン社会」の実現を目指す予算を確保していることだ。
デジタル化については、21年9月に総合調整機能を持つデジタル庁を発足させる。官民の人材約500人を活用し、情報システム予算の一括計上を進め3000億円規模の予算で、政府全体の情報システムを一元的に管理することになる。
脱炭素社会、グリーン社会の実現に向け、野心的な二酸化炭素の排出削減に取り組む企業に対する成果連動型として今後3年間で1兆円の低利融資制度を創設したり、再エネルギー・省エネルギーなどの研究開発や導入を支援したりする。
また地方活性化としては、地域活性化の取り組みを支援する1000億円の「地方創生推進交付金」で移住支援事業を拡充するほか、企業と自治体のマッチング支援を行う「地方創生テレワーク推進事業」などで地方への人や仕事の流れを拡大することを目指す。
全体の歳入・歳出の状況をみると、税収は新型コロナによる景気の低迷が直撃し57兆4480億円となり、20年度当初予算に比べ6兆650億円減少する。このため公債収入が43兆5970億円となり、11兆408億円増加。公債依存度は40.9%に達する。建設公債は7690億円減少するが、特例公債、いわゆる赤字国債が11兆8098億円増加する。
歳出は、一般歳出が66兆9020億円となり、20年度当初予算より5兆1837億円増加するが、この中には新型コロナ対策の予備費5兆円が含まれており、それを除けば1837億円の増加にとどまっている。
一方、地方交付税交付金と国債費は不可避的に歳出増とならざるを得ず、それぞれ1396億円、4072億円増加している。
以上のように、21年度予算案は、足元の新型コロナ対策と中期目標を達成するためのメリハリの利いた予算となっていると言える。新型コロナの影響による税収減が歳入面で大きく影響しているが、その悪影響から一刻も早く脱出するために経済の早期回復が不可欠となっている。
(terracePRESS編集部)