危機的農業の強化を図る菅政権
農水省が先ごろ公表した2020年農林業センサス(同年2月1日現在)の確定値によると、国内農業の脆弱化が進んだことが鮮明になった。農業は国の根幹で、食料安全保障の強化が求められる中で、農業の担い手が一段と少なくなっているのが現実だ。菅政権は農業の強化を政権の重要課題に掲げ、農業生産物や食料品の輸出強化などを進めている。農水省は新規就農の促進なども進める方針だ。
センサスで、農業経営体の動向をみると、個人(世帯)で事業を行う「個人経営体」は103 万7千経営体となり、5年前に比べ 30 万3千経営体、22.6%減少した。その一方で、団体経営体は3万8千経営体となり、わずかであるが1千経営体、2.8%増加したが、個人経営体の減少には歯止めがかかっていない。
この個人経営体の15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している基幹的農業従事者は136 万3千人となり、5年前に比べ39万4千人、22.4%の大幅減となった。基幹的農業従事者のうち65歳以上が占める割合は69.6%となり、5年前に比べ4.7ポイント上昇している。
基幹的農業従事者の約7割が65歳以上となり、日本の農業が高齢者に支えられている構図がますます鮮明になっている。
また懸念されるのが、個人経営体のうち、世帯所得の50%以上が農業所得などと規定される主業経営体が、23 万1千経営体と5年前に比べ6万1千経営体減少していることだ。農家のプロがどんどんリタイヤしているわけだが、基幹的農業従事者の約7割が65歳以上という状況を考えれば、主業経営体の減少は今後も続くだろう。
以上のように国内農業は、生産者という側面をみれば縮小の一途をたどっていることは紛れもない事実だ。
しかし、1農業経営体当たりの経営耕地面積をみると3.1ヘクタール(北海道30.2ヘクタール、都府県2.2ヘクタール)となり、5年前より20.4%(北海道13.9%、都府県18.4%)増加し、歩みは遅いものの農地の集積が着実に進んでいる。
また、農産物販売金額規模別の農業経営体数をみると、3000万円以下だった経営体が減少、3000万円以上の経営体が増加とはっきり分かれている。3000万円から5000万円の経営体が9.7%増、5000万円から1億円が25.5%増、1億円から5億円が16.3%増、5億円以上が42.4%増となっている。
このように〝儲かる農業〟が定着すれば、新規就農者の増加も期待でき、縮小均衡からの脱却に道を開くことになる。
菅政権は現在、2025年2兆円、2030年5兆円を目標として農林水産物輸出を強化している。そのため、27の重点品目を選定し、国別に目標金額を定めて、産地支援を強化、農業に対する資金供給の仕組みの見直しもしている。こうした菅政権の取り組みにより、農業が地域をリードする成長産業となる。
(terracePRESS編集部)