憲法改正でスタンスの違い隠す立憲と共産
憲法改正に向けた国民投票法改正案が今国会で成立する見通しとなった。8国会も継続審議となっていた法案が成立見込みとなったのは、与党と立憲民主党が法案修正をすることで一致したためだ。これに対して共産党は、修正案についても反対の姿勢を示した。
これは憲法改正論議の前提となる国民投票法改正案へのスタンスが立憲、共産で大きく異なったためだ。この重要な法案で対応が異なる両党が選挙で共闘することは許されないことだ。
立憲民主党と共産党は7日に国対委員長会談を開いた。この会談は、国民投票法改正案への対応が分かれた溝を埋めるために開かれたもので、立憲の安住氏は「国民投票法改定案での対応は分かれてしまったが、共闘をもう一度確認し、今後もいっそう体制を強化して連携していこうと改めて確認した」などと発言。
共産の穀田氏は「今後、改憲を許さないたたかいを起こし、総選挙で審判を下すことが大事だ」と述べた。
両党が溝を埋め、今後の共闘を進めることで一致したわけだが、問題は、改憲論議を今後、進めるのか否か、という点にある。
共産党は憲法記念日の3日に「コロナ危機に乗じた改憲手続き法=国民投票法の『改正』強行に断固反対する」との小池書記局長の談話を発表している。
この談話から考えれば、立憲民主党も卑しむべき改憲勢力になるはずだが、そこは措くとしても、少なくとも共産党は改憲について当然のことながら国会発議は認めないという立場だ。
では、立憲民主党はどうか。安住氏は会談で「われわれは、自民党の改憲4項目のように根本的に国の形を変える姿勢とは違う」「国民からは憲法改正に慎重な声はかなりある。この声に応えられるよう憲法審の慎重な対応をしたい」と述べている。この言葉から類推すれば、少なくとも議論は許容するということだろう。
こうなると立憲と共産は憲法改正も問題へのスタンスが異なることは明白だ。
ところで、これまでの選挙での野党共闘は、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」という団体と野党それぞれが政策協定に署名し、成立してきた。
その市民連合が昨年9月に策定し、野党各党に協力を申し入れた「立憲野党の政策に対する市民連合の要望書」という文書がある。これが衆院選での政策協定のベースになると考えられるが、ここでは「第9条『改定』に反対し、改憲発議そのものをさせないために全力を尽くす」としている。
この「改憲発議をさせない」ということは、発議に向けた議論も行わないということに等しいだろう。それを各野党に求めているわけだ。
以上をみれば、共産や市民連合が改憲論議そのものを事実上否定していることになるが、では立憲はどうなのか。議論はするが、発議は否定するのか、それとも立憲としての改憲案を提出するのか。
立憲や共産が憲法改正問題や議論に対する互いのスタンスの違いを隠したまま野党共闘をするとすれば、それは有権者への裏切りにほかならない。
(terracePRESS編集部)