相変わらずの「批判はすれど提案はしない」新聞
新型コロナウイルス感染症対策では、東京都を対象に通算で4度目となる緊急事態宣言が発令された。より感染力の強いデルタ株への置き換わりが進む中で、感染対策の徹底がさらに必要となったための宣言だ。朝日新聞など新聞各社は社説でも宣言発令を取り上げているが、相変わらずの「批判はすれど提案はしない」という姿勢だ。これで言論機関と言えるのだろうか。
政府が東京都への宣言発令を決めた翌日、9日付け朝刊で各新聞社は社説で「緊急事態宣言」を論じている。論じているとは言っても、その中身は極めて薄っぺらいものでしかない。
朝日新聞の社説は「4度目の宣言 矛盾する『発信』に懸念」とのタイトルで、「変異株(デルタ株)への置き換わりも進む。医療体制の逼迫を招く前に、感染の拡大抑止に全力を挙げるべき局面である」と述べ、感染拡大の実効性を高めることを求めている。
その上で「政府は宣言の期間を来月22日までと、当初の設定では過去最長となる42日間に定めた。今月後半の4連休や夏休み、お盆といった人の移動が活発になる時期をカバーするためだ。しかし、東京五輪という、多くの国民が懸念する一大イベントの開催を強行する政府が、飲食店の営業制限や個人の行動抑制を呼びかけたところで、説得力に欠けるのは明らかだ」と指摘している。
どうやら朝日新聞は五輪さえ止めれば、感染拡大を防げると考えているようだ。感染拡大の決定的な方策はないのだが、まずは通勤などの人流を少なくし、夜の街での飲食を格段に抑制することが不可欠となることは誰にでも分かる。
それが、五輪があるから誰も容認しなくなるというのでは、まさに幼児のような思考だ。
五輪を止めるべきという主張をするのはいいが、五輪が開かれていない段階でも感染者が増え始めたから、今回の宣言に至ったのだ。
だから、五輪とは別に、感染対策をどうするかが問われるはずなのだが、社説にはそれに対する回答は見当たらない。
実は、毎日新聞もまったく同じだ。9日付け朝刊で「宣言下で五輪開催へ 感染爆発防ぐ対策見えぬ」とのタイトルの社説を掲載しているが、五輪さえ開かなければ感染を収束させられると言わんばかりだ。東京新聞も「4度目の宣言 対策の迷走が目に余る」との社説を掲載している。
結局、いずれの新聞も言いたいのは、「五輪を開く限り、国民から感染対策への協力を得るのは難しい」ということなのだろう。しかし、これではまるで、五輪をやるから協力しなくてもいいと国民に言っているのに等しい。その上、対策を強化すべきといいながら、具体的な対策は何も提示していない。
そしてもっと重要なことは、国民に対して感染対策に協力するよう呼びかけることすらしていないのだ。「悪いのは政府、被害者は国民」という構図を作るのがこれら新聞の意図するところなのだろう。
(terracePRESS編集部)