アベノミクス継続の是非問う世論調査のお粗末
衆院選が走り出す中で、安倍元首相が掲げたアベノミクスの検証や岸田政権の経済政策とアベノミクスとの関係性が論じられている。中には「アベノミクス」を続けるべきかと問うメディアの世論調査さえある。しかし、経済政策は「善悪」「功罪」ではかれるほど単純なものではない。そんな常識さえ無視して調査の質問項目にするメディアは、正しい情報を提供するという責務すら放棄している。
例えば、時事通信は10月の世論調査で、「アベノミクス」を岸田政権でも続ける方がいいかどうか訊いている。その結果「見直す方がよい」が62.5%に達し、「続ける方がよい」と答えたのは14.7%にとどまった。「どちらとも言えない・分からない」が22.8%だったという。
支持政党別だと、見直しを求める意見は自民党支持層で55.7%、立憲民主党支持層では93.9%だったという。
以上の世論調査の結果をみると、アベノミクスはもはや有権者から〝見放された〟経済政策ということになるのだろう。
しかし、いうまでもなくアベノミクスは、「大胆な金融政策」「機動的な財政政策」「民間投資を喚起する成長戦略」という「三本の矢」で構成されたもので、経済を活性化する上で、金融政策や財政政策、成長戦略を組み合わせることは至極当たり前のことだ。
もちろん、財政政策には減税をしたり、公共投資をしたりするという選択肢はあるが、財政出動で景気を下支えすることに何も間違いはない。
また同様に金融政策を行うことも、成長戦略も経済政策としては常道だ。もちろん、アベノミクスでは異次元の金融緩和政策で株高を意図的に作るという極めて〝戦略的〟な金融政策が行われたが、それが国民に対してマイナスとなったわけではない。
そもそも、アベノミクス期間中、景気がずっと悪かったわけではない。それよりも、2012年11月から2018年10月までの71カ月間は「アベノミクス景気」と呼ばれる戦後最長の景気拡大期となった。
これらの結果、2014年度に3.6%だった完全失業率は2019年度までほぼ右肩下がりとなり、2019年度には2.3%という歴史的な低水準を実現し、ほぼ完全雇用の状態となったのだ。
もちろん、GDP成長率が想定通り確保できなかったというような〝失敗〟があったことも事実だ。
メディアは「分配政策」との対比で、アベノミクスの評価を訊いているのだろうが、対比する意味のなさすら理解できないのだろう。分配政策はきちんと行いながら、経済の成長戦略は、金融、財政、投資の3分野で展開することが不可欠だ。
立憲民主党などは個人消費さえ活性化させれば経済が自律的に成長するとしているが、それは幻想に過ぎない。アベノミクスによる株高などで2013年度に個人消費が盛り上がったものの、持続しなかったことを見ても明らかなのだ。
(terracePRESS編集部)