さらなる格差の縮小図る「新しい資本主義」
内閣府は先ごろ、日本経済の現状に関する報告書「日本経済2021-2022」(ミニ経済白書)をまとめた。労働所得の格差が全体では緩やかな低下傾向にある一方、25~34 歳ではジニ係数でみた所得格差は拡大傾向にあることを示した。また、地域間の所得格差が縮小傾向にあるという。岸田政権が経済格差の縮小を掲げており、格差のさらなる縮小が期待できる。
雇用については、生産年齢人口(15~64歳)が1995 年をピークに減少が続いている中で、新型コロナ感染症の影響が表れる 2020年4-6月期以前まで就業者数や雇用者数は増加が継続し、感染拡大後は就業者数、雇用者数ともに横ばいで推移。
雇用者の内訳をみると、感染拡大前まで一貫して増加してきた非正規雇用者が、コロナの影響で20年4-6月期に大幅に減少した後、増減がありながら横ばいで推移しており、依然として感染拡大前の水準を下回っている。
一方、2014年まで減少してきた正規雇用者数は 2015年に増加に転じ、感染拡大後も増加傾向を示し、2013年と比べると非正規雇用者を上回る増加となっているという。
「労働所得の格差」については、多様な働き方の実現で「全体としては緩やかな低下傾向にあるものの、25~34 歳では男性の非正規雇用比率の高まり等を背景に、ジニ係数でみた所得格差は拡大傾向にある」と指摘。
その上で「25~34 歳の世帯所得の分布の変化をみると、単身世帯の割合が大きく高まるとともに、低所得世帯では結婚や子どもを持つという選択を行うことが難しくなっている」とし、低所得層の存在が少子化の要因になっているとの見方を示した。
「地域間の所得格差」については、「地方圏での成長を第二次産業がけん引したことを背景に、地域間の所得格差は縮小傾向にある」と指摘している。
しかし、地方移住を考えている人にとっては仕事や収入面での懸念が最も大きいとされており、今後は「地方に付加価値の高い産業を呼び込み、雇用機会を確保する取組は地方への人の流れを作り出すに当たって、引き続き重要と考えられる」としている。
少子高齢化の進展で、今後、人手不足がさらに顕在化してくる。人手不足に直面する企業では正社員の採用や登用などにより人材確保を進め、さらに定年延長や継続雇用の取組で人材を確保している。
一方、30歳代の男性や50歳代の女性、男性高齢層を中心に、転職を通じた人材活用も進んでいるが、こうした人材活用や労働移動を後押しするには、学びの機会の提供が必要となることは間違いない。
この点についてミニ白書では「自発的に学び行動を行った者の年収はそうでない者と比べて高く、キャリア展望も開けている傾向にある。研修制度を整備することに加え、業務等に応じた目標設定とその目標の実現に向けた自発的な学習を促していくことが求められる」と指摘している。
岸田政権は「新しい資本主義」を実現するため、企業の人的投資を促進することや、非正規雇用労働者らを対象とした再就職や転職に向けた無料の職業訓練の提供なども行う方針だ。そうした新しい社会を作ることによって企業と労働者のミスマッチの解消が不可欠となっている。
(terracePRESS編集部)