ガソリン価格抑制進める岸田政権
ロシアのウクライナ侵攻はさまざまな影響を国際社会に与えているが、原油価格が高騰する可能性もその一つだ。現在は、各国で新型コロナ対策の緩和による需要増で原油価格が高騰し、ガソリン価格も上昇しているが、これにウクライナ侵攻の影響も加わる恐れもある。ガソリン価格の上昇は国民生活や企業活動に直結するため、岸田政権はガソリン価格の急激な上昇を抑えるための対策の拡充などを進める方針だ。
原油価格は昨年末以降、急激に上昇している。ブレント原油で見ると昨年12月20日に1バレル約72ドルだったのが、2月22日には99ドル台にまで上昇している。この原油価格の上昇はほとんどが需要増に起因するといわれているが、さらにロシアによるウクライナ侵攻による影響が懸念されている。
もちろん、現時点では国際的な原油供給はロシアの侵攻によっても断絶しておらず、先進各国の対ロシア経済制裁もエネルギー供給を直接阻害するものとはなっていない。
それに加えて、国内には現在、原油については国、民間合わせて約240日分の備蓄があり、LNGも電力会社、ガス会社が2週間から3週間分の在庫を保有している。このため、直ちに日本のエネルギーに大きな問題が出る状況とはなっていない。
しかし、燃料価格が上昇すれば日本経済は大きな打撃を受けることは間違いない。このため岸田首相は「原油など燃料価格高騰に対して国民生活や企業活動への悪影響を最小限に抑えるようにする」として緊急対策に取り組んでいる。
具体的には、例えばガソリンなど燃料油高対策として現在も実施している石油元売り補助金を、1リットルあたり5円から25円程度に引き上げる。また、エネルギーの安定供給に向けた増産要請や、追加の備蓄石油放出などの対策も実施する。また、業種別対策や中小企業対策、地方の取組支援なども実施する見込みだ。
またガソリン価格をめぐっては、原油高などでガソリン価格が高騰した場合に、ガソリン税を引き下げるための「トリガー条項」がある。現在は、東日本大震災の復興財源を確保するため一時凍結されているが目下、凍結解除をめぐってさまざまな議論がされている。
岸田首相は国会で「当面は、今の激変緩和措置の拡充で対応したいと思う。しかしその先は将来的にはさらなる原油高騰もありえ、トリガー条項をはじめとする、あらゆる選択肢を排除しない」などと述べている。
ガソリン税は国の財源である揮発油税と、都道府県や市町村の財源になる地方揮発油税に分かれるほか、軽油にかかる軽油引取税は全額が都道府県税となっている。
総務省によると、「トリガー条項」を発動した場合、地方自治体の税収が1年間で約5000億円以上減ることになり、地方自治体にとっては大きな問題となる。
もちろん、価格が高騰した場合はトリガー条項の発動も必要となるが、ただ発動すればよいというものでもない。岸田政権はそのため、状況をみながらさらなる高騰があれば「トリガー条項をはじめとするあらゆる選択肢を排除しない」としているわけだ。当面は、国民が落ち着いて対応することが最も重要だ。
(terracePRESS編集部)