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始まった米中の「新冷戦」

戦後の世界は超大国の米国を中心に動いていた。米国はさまざまな地域の紛争にも介入し、まさしく〝世界の警察官〟の役割を果たしていた。ソ連という〝敵役〟が存在していたにせよ、その敵役の登場シーンは長くは続かなかった。しかし、米国中心の世界も、米国単独の世界の警察官ももはや過去の話になりつつある。それに代わって世界では、米国と中国の「新冷戦」が始まっている。

 

防衛省のシンクタンクである防衛研究所は先ごろ、日本周辺の安全保障環境を分析した年次報告書「東アジア戦略概観2021」を公表した。

 

報告書は、ホワイトハウスが2020年5月に、「中華人民共和国に対する米国の戦略的アプローチ」と題した対中政策文書について、「この文書は、米国と中国による『2つのシステム間の長期的な戦略的競争』が始まっているとの認識を示した」と紹介。

 

一方、中国について「習近平主席も自ら、米国との争いに最終的に勝利する決意を示した」と指摘。

2020年10月23日に習主席が中国人民志願軍の朝鮮戦争参加の70周年記念大会での演説で、「中国による『抗米援朝戦争』への参加は、米軍が中国の安全保障を脅かしたことに対する正当な反撃であり、米国に侵略された北朝鮮を助ける正義の戦争であったと主張」したことを紹介した上で、さらに「中国の主権、安全、発展の利益を損なったり、中国の領土を侵犯し分裂させる行為があれば『中国人民が必ず痛撃を与える』と述べた」と論じている。

 

中国の南シナ海での活動とともに、東シナ海についても分析。特に、尖閣諸島周辺で中国海警局の船舶の」日本漁船への執拗な追尾などが相次いでいることに懸念を示した上で、「中国外交部の報道官は『中国海警局の船は法に基づいてこの漁船に対して追跡と監視を実施し、中国側海域から即時に立ち退くよう要求した』と独自の立場に基づく主張を行った」ことを指摘している。

 

また、中国で海警法が施行されたことについて「今後、所属船舶のさらなる武装化の進展や、尖閣周辺海域においてより挑戦的な行動に出る可能性なども強く懸念され、警戒を要する」と警戒感を強めた。

 

その上で報告書は、中国による南シナ海への対艦弾道ミサイル発射などを挙げ、米軍の接近を阻む「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力の強化を加速させたと分析し、「西太平洋を含めた東アジアの海洋における中国と米国の軍事的な角逐は、米中『新冷戦』の下でますます激しさを増していくだろう」と結論づけている。

 

米中新冷戦の舞台は「インド太平洋地域」となることは間違いない。そしてそこには経済大国の日本がある。日本の安全保障をどのように確保していくのか。国会で、単なるすれ違いではなく、真剣な議論が必要な時代となっている。

 

(terracePRESS編集部)

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