局面変わった新型コロナの感染拡大
新型コロナウイルス感染症で東京都に4回目の緊急事態宣言が発出されたほか、全国的にも感染者が再び増加したことから、感染の〝第5波〟の兆候がはっきりしてきたなどとされている。ここへきて感染者が増加しているのは日本だけでなく、米国、英国、フランスなど各国でも増加している。しかし、メディア報道ではなかなか分からないが、今回の〝第5波〟がこれまでとは異なるのも事実だ。
海外の状況をみると、1日当たりの新規感染者が6月には2万人台だった米国は7月9日に約4万8000人、16日には約8万人と増える傾向を示している。英国でも4月、5月は数千人だったが、5月下旬から急増し、6月30日には約2万5000人、7月17日には約5万4000人などと深刻化している。
日本でも7月に入って増加の傾向を示し始め、14日には3172人と3千人台となり、17日には3871人となっている。
デルタ株による感染拡大は世界的な傾向で、日本だけが感染拡大しているわけではない。各国とも、国内事情に沿ったさまざまな手を打ち、いったん収束傾向が見えても、再び感染拡大している。それがウイルスとの戦いなのだろう。
しかしながら、今回の感染状況を「第5波」と呼んで良いかどうかは別として、今回の感染拡大は、これまでのものと明確に異なることも事実だ。
メディア報道に接していると、新規感染者が増加する一方で、それによって東京に第4回目の緊急事態宣言を発出せざるを得ないなど、極めて深刻な状況に直面しているかのような印象を与えられるが、決してそうではない。
前述したように日本では7月に入ってから新規感染者の増加傾向が鮮明になっている。しかし、新規の重症者は6月中旬から減少傾向を示し、例えば7月1日、2日に500人台だったのが15日からは300人台で推移しているのだ。
こうした状況については菅首相も8日の会見で「感染状況には従来とは異なる、明らかな変化が見られている。東京では、重症化リスクが高いとされる高齢者のワクチン接種が70%に達する中、一時は20%を超えていた感染者に占める高齢者の割合は、5%程度までに低下している。それに伴い、重症者用の病床利用率も30%台で推移するなど、新規感染者数が増加する中にあっても、重症者の数や病床の利用率は低い水準にとどまっている」と明確に説明している。
これまでの感染対策、ワクチン接種が明確に効果を発揮し、感染者が増えているとはいっても、重症者は減少、重症者が減少することで死者も減少するなど、局面が異なっているのだ。
札幌医科大の推計によれば、7月17日現在の7日間の新規死者数(人口100万人当たり)は、米国5.3人、英国4.3人、イタリア1.6人、ドイツ1.6人などとなっており、世界平均は7.3で、これに対して日本は0.7人だ。
菅政権のコロナ対策に国民の批判が高まっているとされるが、こうした状況を冷静に見れば、日本のコロナ対策は順調に推移しているのが実態なのだ。
(terracePRESS編集部)