「国難」に対応できる予算が不可欠
2023年度の政府予算策定に向けた概算要求は、一般会計での要求総額は110兆円超となり、111兆円超で過去最大だった22年度概算要求に次ぐ規模となった。安全保障や社会保障の確保、新型コロナ対策など「戦後最大の国難」(岸田首相)の中での予算編成が求められており、国民生活の安定や安心して暮らせる社会の構築には十分な予算措置が必要だ。
概算要求は、必要な金額を示さずに事業項目だけを記して予算要望する事項要求も多く、今後の予算編成のプロセスの中で決定していく。
省庁別にみると、要求額が最も大きかったのは厚生労働省の33兆2644億円で、高齢化に伴う年金や医療費など社会保障費の伸びを5600億円と見込んでいる。
23年4月に発足するこども家庭庁関連では、保育所や幼稚園に通っていない「無園児」対策など4兆7510億円を要求している。また、国土交通省は6兆9280億円、農水省は2兆6808億円などとなっている。
予算編成の最大の課題となる防衛省予算は、過去最大の5兆5947億円となっている。事項要求も多く、最終的には6兆円台に達するとみられている。
概算要求に際し、防衛省は日本の安全保障環境について「国際社会は戦後最大の試練の時を迎え、既存の秩序は深刻な挑戦を受け、新たな危機の時代に突入」と指摘。ロシア、中国、北朝鮮の動きなどを踏まえて「欧州で起きていることはインド太平洋地域においても生起しうるものであり、武力攻撃が生起しているか否かを問わず、我が国が直面する安全保障上の課題は深刻化」との懸念を表明している。
その上で、「我が国が直面する現実に向き合い、将来にわたり我が国を守り抜くため、以下のような考え方に基づき防衛力を5年以内に抜本的に強化」として①我が国への侵攻そのものを抑止するため、スタンド・オフ防衛能力や総合ミサイル防空能力を強化 ②万一の抑止が破られた場合には、非対称な優勢を確保して相手を阻止・排除しうる無人アセット防衛能力や陸海空領域を含む領域横断作戦能力を強化。その際、迅速な意思決定のための指揮統制・情報関連機能を強化③迅速かつ粘り強く活動するため、機動展開能力や持続性・強靱性に必要な施策を重視-としている。
防衛力に関しては、年末までに「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱」「中期防衛力整備計画」を策定することになっており、「スタンド・オフ防衛能力」や「総合ミサイル防空能力」「無人アセット防衛能力」「領域横断作戦能力」などは事項要求となっている。今後、政治的にも国民の間でも活発な議論が行われたり、厳しい予算折衝が展開されたりするが、日本の安全保障を将来にわたって確保するためには、現実に即した対応が必要だ。
23年度当初予算は過去最大だった22年度の107兆5964億円を超える可能性があるが、岸田首相の指摘通り、日本は現在、戦後最大の国難に直面していると言っても過言ではない。だからこそ、必要な政策にはきっちり予算措置をするような政治決断が求められる。
(terracePRESS編集部)