新型コロナの意見を述べるのが分科会の役割
北海道、岡山県、広島県への緊急事態宣言発令をめぐり、野党やメディアが政府への批判を強めている。批判の理由は、当初は「まん延防止等重点措置」だったのが、基本的対処方針分科会の意見を受け決定直前に方針を変更した、というものだ。専門家の話を聞かなければ「独断」、聞けば「ドタバタ」。局外に身を置く野党やメディアは楽な立場で批判を続けている。
菅首相は14日の会見で、メディアから分科会での専門家の意見により、当初は予定していなかった緊急事態宣言の適用を決めたことを問われ「これまで政府は、地域の感染状況を踏まえた感染防止対策を分科会に諮問するとともに、そこでの専門家の意見を踏まえた上で、適切に対応してきた。今朝の分科会では、専門家からより強いメッセージを出すことが必要という意見があり、そうした意見を尊重し、比較的人口規模も大きく、影響が懸念されることを踏まえて、緊急事態宣言の対象とする、このことの判断をした」と述べた。
新型インフルエンザ等対策特別措置法では、第七十条の二で「新型インフルエンザ等対策の推進を図るため、内閣に、新型インフルエンザ等対策推進会議を置く」と定めている。
この推進会議の役割は「新型インフルエンザ等対策について調査審議し、必要があると認めるときは、内閣総理大臣又は政府対策本部長に意見を述べること」などが規定されている。
この会議は、新型インフルエンザ等対策推進会議令という政令で、分科会を置くことができ、その1つが基本的対処方針分科会だ。
基本的対処方針分科会は「会議の権限に属させられた事項を処理」するから、会議と同様に政府対策本部長、すなわち首相に意見を述べることができる。
これまでの緊急事態宣言やまん延防止等重点措置もこうしたプロセスを経て決定されており、それは今回も全く同じだ。新型コロナに関しては厚労省も、医療・公衆衛生分野の専門的・技術的な事項に関して助言をしてもらえるようアドバイザリー・ボードを設置しているが、こうした厚労省をはじめとする政府機関が策定した原案を、これまでは分科会も承認していたわけだ。
もちろん、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置などは財政的な支援も必要だから、方針は財政なども含めて総合的に検討して決めることになり、その点は分科会の医療専門家とは意見を異にする部分も当然あるだろう。
これまではその溝も含めて、政府の原案を承認していた分科会が、今回は医療専門家の意見を強く打ち出したため、菅首相がそのアドバイスに基づき方針を変更したということだ。
内閣府が設置している分科会が、法律に基づき意見を言い、首相がそのアドバイスに基づき方針を決定したに過ぎない。そして、菅首相がアドバイスに基づき変更したことも、これも当然のことなのだ。
(terracePRESS編集部)