日本と他国の違いを認識した物価対策を
物価の上昇が続いている。9月の消費者物価指数は、コア指数で前年同月と比べ3%の上昇となった。この局面の中で、日銀の異次元緩和が要因になっているとの見方が出ているが、こうした一面的な見方では経済金融政策は間違いを犯す。日本の内外環境を見ながら物価対策を進めることが不可欠だ。
総務省が21日に発表した9月の全国消費者物価指数(2020年=100)は、生鮮食品を除いたコア指数で、前年同月比3.0%上昇の102.9となった。上昇率は14年9月以来8年ぶりの大きさで、消費税増税の影響を除けば91年8月以来31年1カ月ぶりとなった。
日本経済は長期間にわたりデフレに苦しみ、2%の物価上昇を目指してきたのだから、物価の3%上昇が〝8年ぶり〟〝31年ぶり〟などと言ってもそれほど驚くことではない。これまで物価上昇を実現できなかったのが問題だったのだ。
しかし、だからといって今回の物価上昇が好ましいとはもちろん言えない。今回の物価上昇は、当初は新型コロナウイルス感染症の抑制による米国など世界経済の急激な拡大で起こり、その後、ロシアのウクライナ侵略に伴い、エネルギーなどさまざまな資源価格の上昇によって引き起こされた。
そのプロセスでは、米国などが金融引き締めを行い、日米の金利差が拡大し、円安傾向が顕著になった。それが今ではドルの独歩高の様相を呈している。
そうした状況の中で物価高に直面しているのはもちろん、日本だけではない。ドイツでは9月の消費者物価指数が前年同月比10.9%、英国10.1%、フランス5.6%、米国8.2%など日本をはるかに上回る物価上昇、つまりインフレに見舞われている。
だから世界経済では現在、インフレの抑制が課題となっており、そのために金利の引き上げは当然、行われるものだ。
日銀の黒田総裁は10月13日、G7財務大臣・中央銀行総裁会議に出席した米国で記者会見し「日本の消費者物価は、コスト高を背景にして、生鮮食品を除くベースで2.8%の上昇となっているが、来年度以降は2%を下回る水準まで低下していくとみられる。欧米各国あるいは多くの途上国と違い、日本の物価上昇率はこの水準であり、しかも来年度以降は2%を下回る水準まで低下していく、これはIMFもそうみているが、物価安定の目標の持続的・安定的な実現を目指して、金融緩和を継続する」などと説明している。
つまり、欧米各国とは日本の状況は異なっているということだ。例えば、共産党の志位委員長は「物価31年ぶり3%上昇。高騰が止まらない」「『異次元の金融緩和』が原因だが止めるに止められない」などとツイッターで発信しているが、単に金融緩和政策が日本の物価高を招いていると主張しているのだ。
もちろん、物価高には対策が必要なことは言うまでもない。物価が上昇しても賃金がそれを上回る上昇をすれば影響はなくなる。給付金など国民への支援も求められるだろうが、それとともに賃上げが不可欠となる。
賃上げについては岸田政権も真正面から取り組む考えを示しており、今後の成果が期待される。
(terracePRESS編集部)